#1 最初の1日目
もうこんな仕事やめだ。うんざりだ。
昨日はクモ、おとといは共食いゴリラ。何週間か前は、通りかかった盗賊連中に命まで奪われかけたこともあった。
この森でまともに狩猟を続けていくことなんて不可能だ。
同業者と共に領主に窮状を訴え出たこともあった。
一応、解決に向けて動いてはくれているようだが、彼らの兵士は街の警護と街 道のパトロールで手一杯なのだそうだ。
解決してくれるような力を持った傭兵団が村に立ち寄るまで待てという。
だから待った。
でもだれも解決に力を貸してくれない。
だからもうやめよう。
狩猟の仕事は今日で廃業しよう。
死んだ父親から譲り受けたハンティングボウで、最後に鹿を仕留めたのは どれだけ前のことだろう。
モンスターか密猟者を追っ払うことにしか使っていない。
だからおれは、今日からTanpopoと名を変える。
傭兵団が来ないなら自分で作ればいい。
この弓だって鹿を撃つことだけが、できることの全てではないのだ。
荷物をまとめて、その日のうちに近くの村、ウェイレアースヘイムに向かう。
もう、あのボロ家も売ってしまおう。
おれがあの家を出たら、もうあの家に戻るやつはだれもいない。
父との思い出、母との記憶。
大切な場所なのかもしれないが、このままオレが飢え死にしたら誰の目にも完全なタダのボロ屋だ。
オレはこの森に縛り付けられていた
父と母の思い出という鎖に足をからめとられていた。
あの二人だってこのままおれがここで朽ち果てることなんて望んじゃいない。だから今こそ、この鎖を断ち切ろう。
思い出というぬくもりに浸っていれば腹が減っていることも忘れられた。生きていくことすらどうでもよく無意味なことに思えた。
でも、もっとやれることがあるだろう?やるべきことがあるだろう?
だからここを立ち去るべきなんだ。前へ進むために、このぬくもりを断ち切るんだ。父も、母も、この森で生きてきた今日までの全てを。
そして、復讐するんだ。盗賊もクモも共食いゴリラも、ぜんぶこの手でぶっ殺してやる。
村に行き、旧家を買ってもいいというもの好きがいたので男に鍵と権利証を譲った。
無一文だった懐に1333Crownが残った。
それと、手荷物にあった最後の収穫物の毛皮も市場で売った。
その金を持って広場へ行き、最初の仲間を探す。
見慣れた顔があった。
職は違うが、二人とも仕事柄、以前から顔なじみの連中だった。
Marco The Lumber (LV1)
呼び名:マルコ
給金:14c
前職:木こりの息子
特性:頑丈(怪我しにくい)、ビーストハンター
潜在:HP(++)、Melee(+)、MeleeDf(+)
仕事:最初の仲間(盾前衛)
Story:
西の森で木こりをしていたマルコ。
タンポポは東の森だったため、顔を合わせる機会はあまりなかったが、歳も近くて子供の頃はよく遊んだ。
志願した理由は、たんに家を継ぐのが嫌だったらしい。
傭兵として名を売り、別の人生を歩む願望を抱いたようだ。
Jack The Smith (LV1)
呼び名:ジャック
給金:8c
前職:鍛冶屋の見習い
特性:アスレチック、イーグルアイ
潜在:Resolve(++)、Melee(+)、RangeDf(++)
仕事:最初の仲間(両手前衛)
Story:
村の鍛冶屋の見習いだったジャック。
両親のことはよく知らないが、聞いた話だと、キャラバンで移動中に盗賊に襲われて皆殺しにされ、ただ一人、小さな子供のジャックだけが生き残ったという。
鍛冶屋の恩人を裏切ることになってしまったが、父や母のこと、自分がどこで生まれたのか、本当の家がどこなのかを知りたくて旅に出たいらしい。
一応、おれがリーダーということで、今日から彼らに給金を支払い、戦いに没頭してもらうことになる。
この時、「傭兵の仕事なんて」と甘く見ていたことは否定しない。
そこは、たった1つの間違い、ほんのわずかなズレが死を呼ぶ世界。
数少ない親友たちと共に、生き残ることがマレな、そんな世界に踏み込んでいくことがどれだけ無謀なことなのか。
だが俺たちは意気揚々だった。
新しい世界、新しい出会い、心躍る冒険、生死を分かつ危険、耐えがたいであろう苦痛が待ち受ける未来の日々が、今は輝かしく見えて仕方がない。
3人は今、神のいたずらに満ち溢れた地獄の道の第一歩を踏み出したところだ。